あるところに、おじいさんと おばあさんが おりました。
ある日、おじいさんは山へ芝刈りに行きました。
おばあさんは川へ洗濯へ行きました。
おじいさんが山で芝刈りをしていると、突然思いました。
「ええい! やってられるか! わしがやりたいのはこんな事じゃない!
わしには やるべきことがあるんじゃ!」
おじいさんは、その夜 おばあさんにいいました。
「ばあさんや、わしは鬼退治に鬼が島へ行ってくる。
出発はあしたじゃ。
握り飯をたあんと用意してくれ!」
おばあさんは、いいました。
「はいはい、わかりました、おじいさん。
どうか気を付けてくださいね。」
次の日、おばあさんは早起きをしてたくさんの握り飯を作りました。
おじいさんは、旅の支度をしました。
鬼退治のために棒も持ちました。
そして、おばあさんの握り飯をもっていいました。
「それではいってくる」
「ええ、ええ、どうか気を付けて。
決して無理をなさらぬよう。
晩御飯の前に帰ってきてくださいな。」
おじいさんが、鬼退治に行く途中、一匹の犬に会いました。
「これこれ、犬や、犬さんや」
おじいさんは言いました。
「なんだい、おじいさん。」
犬は言いました。
「わしと一緒に鬼退治にいかんかね?」
「ええ! めっそうもない。そんな恐ろしいことはできません」
犬はこわごわと去っていきました。
しばら行くと、おじいさんは猿に会いました。
「これこれ、猿や、猿さんや。わしと一緒に鬼退治に行かんかね?」
とおじいさんは言いました。
「いいけど、何かくれるのかい?」
猿は言いました。
「握り飯なら たくさんあるぞ」
「握り飯ぐらいじゃ いけないな」
猿は去ってしまいました。
さらに進むと、おじいさんは雉にであいました。
「これこれ、雉や、雉さんや。わしと一緒に鬼退治にいかんかね?」
とおじいさんは言いました。
「はっはっは。何おおっしゃる、おじいさん。
よぼよぼのあなたが鬼退治なんてできるわけがないじゃありませんか。
みんな大笑いしていますよ。
はっはっは」
雉は笑いながらいってしまいました。
それでもおじいさんは鬼退治に鬼が島へ向かいました。
鬼が島についたおじいさんは、鬼に向かって言いました。
「やぁやぁやぁ。鬼ども。退治に来たぞ! 覚悟せい!」
鬼たちはその声にびっくりしました。
ところが声の主がたった一人のおじいさんだったので、みんな大笑いしました。
「じいさん、じいさん、わかったから怪我しないうちにおかえりよ」
おじいさんは、持っていた棒で鬼に襲い掛かりました。
「わあ、危ないじいさんだ」
鬼たちは、おじいさんから棒を取り上げました。
そしておじいさんを持ち上げて投げとばしました。
ドスン。
おじいさんは、投げられた拍子にケガをしてしまいました。
これでは鬼退治はできません。
おじいさんは、あきらめてばあさんが待っているおうちに帰りました。
その夜、おばあさんはおじいさんの手当てをしながらいいました。
「ご苦労様でした。この程度のケガで済んでよかったですね」
「あいたたた。。。くやしいのぉ。あと少しだったんだがのぅ。。。くやしいのぅ」
とおじいさんは言いました。
「ケガが治ったらまた行けばいいじゃないですか。鬼退治。
大丈夫。あなたならきっとできますよ。」
そういっておばあさんは優しく微笑みました。
おしまい。