2017年3月12日日曜日

『騎士団長殺し』/物語は現実世界を侵食する

『騎士団長殺し』を読んだ。

いろいろ思うこと、まだまだ分からないこと、たくさんあるけど、まずは初見で感じたことをメモ。


以下、ネタバレあり。


騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編
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騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編
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この小説の中では、主人公である「私」は画家である。

画家である「私」は、絵の場面を再現することによって、そこに描かれたメタファーを現実世界におびき出す。

そうすることで、「私」はメタファーの世界へ入っていくことができる。


この原理をそのまま受け入れるのであれば、当然、小説にも同じ原理が成り立つはずである。


つまり、小説を読んでいる我々のすぐそばには、メタファーが潜んでいて、そこには、メタファーの世界へ通じる穴が存在するはずである。





「騎士団長殺し」という絵に描かれた"メタファー"と『騎士団長殺し』という小説に描かれた"メタファー"。


それらが合わせ鏡のように反響しあって、それぞれメタファーが無限に増幅し、混然一体となり、ある一転を超えた時に、ポンと現実世界に飛び出してくる。


小説世界が、現実世界に侵食してきた。

そういう感覚がある。


自分の背後にメタファーの存在をありありと感じることができる。