あらすじ
ある日、タヌキのお家のとなりにキツネが越してきて、引っ越しのあいさつを渡す。タヌキは「おかえし」をする。
するとキツネは「おかえしのおかえし」をしてタヌキは「おかえしのおかえしのおかえし」をして・・・
互いの「おかえし」がエスカレートしていって最後には・・・
意思とは無関係に行為が独立する
キツネもタヌキも、狡さや悪意があったわけではなく、ただ当然やるべきことを善意をもってやっていただけでだ。だけど、あれよあれよという間に、自分たちの意思とはほとんど無関係に、「おかえし」という行為だけが独立して繰り返してしまう。現実世界でも、しばしばみられる。
善意を突き通すこと
タヌキとキツネは、善意の人である。「おかえし」を繰り返し、途中「そんなものまで上げるの?」とぎょっとしてしまうが、彼女たちの持ち前の人の好さが、結果的にハッピーエンドを引き寄せる。私たちは、しばしば間違いを犯す。最初は良かれと思って始めたことがとんでもないことを引き起こす。まるで目に見えない者たちに操られているように。
しかし、それでも善意を突き通すことが、「彼ら」に対抗するための方法なのかもしれない。
前向きに、ポジティブに
この絵本は、とてもテンポが良いため、一瞬ドキッとする場面があるけど、全然悲壮感がない。楽しく、ポジティブに、前向きであることも大事。何もなくなったら、イチゴを摘みに行こう
タヌキもキツネも「おかえし」するものがなくなったら、イチゴを摘みに行く。自分の中に誰かに与えるものがなくなったら、自分の外にあるものを手に入れる。すでにあるものを与えあっているうちは、なんだか大変そうだけど、相手のために何かをしようとする様子はとても幸せそうだ。
誰かのために、自分の「外」にあるものを手に入れる。それがコミュニケーションの本質なのかもしれない。