2013年9月20日金曜日

『だいくとおにろく』/鬼とは大工自身ではないだろうか

図書館で『だいくとおにろく』を借りた。

大好きな絵本の一つ。

北欧の民話が元ネタだとか。

よい物語は示唆に富んでいる(何回もいっているけど)。

『だいくとおにろく』も、読むたびに(と言うのは少し大げさだけど)新しい発見がある。

今回読んで、感じたことを備忘録的に記録しておく。


だいくとおにろく(こどものとも絵本)
松居 直
福音館書店
売り上げランキング: 44,766


この物語に出てくる「鬼」は「川の化身」と思っていた。


だけど、ふと思った。



「鬼」とは、大工自身ではないだろうか。


人間の中にある、未知の領域。


自分でも制御できない潜在意識。



荒々しい川にも耐える橋を創るようなすごい力を持つ一方で、鬼のように恐ろしい部分。


そういうものを具現化した存在ではないだろうか。


橋を創る力は、もともと大工に備わっていたんじゃないだろうか。


大工自身がそれに気づいていないだけで。





そして、鬼は大工自身が抱える恐怖でもあると思う。


自分の中にありながら、コントロールできない未知の力に対する恐怖。


人が恐怖に退治した時、二つの選択を迫られる。


ひとつは、恐ろしいものから目をそらすこと。すなわち目玉を差し出すこと。

若しくは、恐怖の正体を見極めること。すなわち鬼の名前を言い当てること。



人間はわけのわからないものが一番恐ろしい。

正体がわかれば、もう怖くない。



そして、恐怖の正体は暗い森の中でしか知ることができない。

たぶん、大工が入っていった森の中は、深層心理の一番深いところなんだと思う。

そして、そこは死の世界の一歩手前なんだと思う。

それくらい、ギリギリのところでしか、鬼の名前を聞くことができない。たぶん。



昔の人は、自分自身の一部を、鬼とか精霊とか、そういうものに切り分けて考えることが上手だったんだと思う。

今の僕らは、「自我」とか「自意識」とかが強すぎて、自分自身は自分自身であると信じすぎてるんじゃないかと思う。

自分自身の中に、自分でもコントロールできないものが存在していることを忘れているんじゃないだろうか。

そういうものに対する、敬意や畏怖の念みたいなものが足りないんじゃないだろうか。


そして、知らず知らずのうちに、鬼に目玉を差し出して、いろんなものを見つめる機会を失っているんじゃないだろうか。


『だいくとおにろく』を久しぶりに見て、そんなことを考えた。



とにかく、『だいくとおにろく』は面白い。

2013年9月18日水曜日

牛河を描いてみた

『1Q84』、『ねじまき鳥クロニクル』に出てくる「牛河」を描いてみた。



小説の登場人物を視覚化するのは野暮だと思いつつも、描いてみたい欲望を抑えられなかった。

とにかく嫌なやつなんだけど、なんとなく憎めない。

とても魅力的な登場人物。



実際、絵にしてみたら、80%位は頭の中のイメージを表現できたかなと思う。

残りの20%くらいはうまく表現できなかった。


せっかく描いたので、ここにUPする。


※イメージを固定化したくない人は見ないでください。




牛河利治
牛河

どうでしょうか。



1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社 (2012-03-28)
売り上げランキング: 6,788


ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社
売り上げランキング: 5,952

2013年9月1日日曜日

ハードカバーのたった一つのいいところ

ハードカバーの本ってあまり好きじゃない。

重いし、かさばる。


でも、本を閉じたときの「パタン」っていう音、あれは好きだ。


読んでるって感じがする。


それだけで、すべてのマイナス面を補って余りある。


文庫本でも、電子書籍でも、あの感覚は味わえない。