2013年6月27日木曜日

【感想文】永遠の0/こんな戦争なら悪くない

最近、本のランキングで『永遠の0』が割と上位のようです。


amazonやブクログのレビューでなかなかの高評価です。



僕も大分前に読んだので、感想を書いておきます。


たぶんネタバレはないです。


永遠の0 (講談社文庫)
永遠の0 (講談社文庫)
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百田 尚樹
講談社
売り上げランキング: 6

この本は、とても面白い。


ハラハラ、ドキドキ。


臨場感あふれる戦闘の描写。


かっこいいヒーロー像。


感動のエンターテイメント。





物語として、とても面白いと思います。




これだけ書くには、相当、当時のことを調べ上げたと思います。


空戦の描写なんて手に汗握ってしまいます。


全体のストーリーも練りに練られていると思います。




だけど。と僕は思います。




この物語を読んだ後、




「戦争ってそんなに悪くないじゃん」



と思ってしまうのです。



なんでだろう?


戦争の悲惨さとか、理不尽さとか描かれているはずなのに、なんでそんな風に感じてしまうんだろう?

たぶん、この物語は、「僕らがみたい戦争像」だからだと思うのです。

「こうであってほしかった戦争」だからだと思うんです。


だから、この物語はとても面白い。


そんなわけで、僕は「うん、戦争もそんなに悪くない」と思ってしまうのです。



だけど、僕はそんな風に思いたくないんです。



「戦争ってロクなもんじゃねぇ」


って思っていたいんです。




なので、「戦争って悪くないかも」と思わせるこの物語があまり好きになれません。



でもこの本は、とても、とても面白いです。




面白いのに好きじゃない。不思議です。

2013年6月16日日曜日

ネズミ色のゾウ

”ネズミ色のゾウ”

とか

”オレンジ色のミカン”

とか。

そういう表現を聞くと、「それはゾウに失礼やろう」「ミカンがかわいそうやろう」と思ってしまう。

だけど、

”ゾウ色のゾウ”

とか

”ミカン色のミカン”

とか言ってしまうと、それはもはや情報として何の意味も持たない。

言葉って難しい。

2013年6月12日水曜日

喜びと悲しみについて

喜びと悲しみについて。



喜びがあるから、悲しみがある。


悲しみがあるから、喜びがある。


月並みだけど。






子どもにプリンを与える。


子どもは喜ぶ。



プリンを食べ終わる。



「もっとほしい」と、子どもが言う。


「もうない」と、僕は言う。



子どもは絶望する。



さっきプリンを食べた喜びが一変、悲しみに変わる。




最初からプリンを食べなかったら、食べ終わってしまう悲しみを知ることはなかった。



喜びと悲しみは表裏一体。




親が人生に対する喜びを教えるとき、同時にわが子が悲しみの底に沈む可能性を覚悟しなければならない。



わが子の人生から悲しみを排除するには、人生の喜びを教えることをあきらめなければならない。



子どもに、喜びを教えるということは、相応の覚悟がいる。


いいところだけを教えることはできない。



たぶん。

2013年6月5日水曜日

それでも村上春樹は僕らの抱える普遍的な孤独を描いていると思う

また、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』に関すること。


ネタバレ注意





少し前に話題になったレビューを読んだ。

(このブログはいつもワンテンポ話題が遅い)


一万人を超える人がこのレビューに共感し、話題になっている。


Amazonレビューでも読めるし、以下のブログ記事に同様の内容が書かれていた。


埋没地蔵の館/「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」はなぜイラっとするのか。



とても面白い。

おもわず「あるあるw」とうなずいてしまいます。


この記事を書いたドリーさんという方は、作家志望らしい。

どおりで、面白いわけだ。




このレビューを楽しみながら読みましたが、それはそれとして、僕の思うところを書いておこうと思います。


感想文の感想文。



上記のレビューに書かれているように、村上春樹の小説に出てくる人は、孤独を抱えている割にはなぜか女にモテる。


だから、「これは僕の孤独とは違う」という感想はよくわかります。


「そんなにモテてるのに贅沢言ってんじゃねーよ」と思います。



だけど、それでも村上春樹の描く「孤独」は普遍的だと思います。


僕らが思春期だったっころ、モテずに苦しかったあの孤独とも通じるものがあると思います。




『多崎つくる』に関していえば、彼の孤独は「誰かを激しく求めないこと」が引き起こしたものです。


だから、いくら特定の彼女がいようと、おしゃれであろうと、「誰かを激しく求める」ことができない彼は孤独です。


だけど、彼は「巡礼」を通して「誰かを激しく求めること」を再開することを決めます。


たとえそれによって、激しく傷ついても。

求めたものが手に入らず、それによって死ぬほどつらい目にあうことになろうとも。

そうすることでやっと、多崎つくるは孤独から解放される。

それが彼にとっての救済です。

多崎つくるにとっての問題は、「彼女と結婚する」ことではなく、「彼女を激しく求めること」が何よりも重要だった。


だから、最終的にはプロポーズがうまくいくかどうかはこの物語ではある意味では問題でないし、物語の中でも描かれていない。


「彼女を激しく求めること」ができるようになった時点で、多崎つくるは救われた。




そして、僕が思春期で、モテなくて、孤独で、つらかったときのことを思い出してみる。


そのころ僕は、「誰かを激しく求める」なんてことをしたことがなかった。

思春期なんて、往々にして

「とにかくモテたい」

「誰でもいいから愛されたい」


としか考えていなかった。


そりゃモテないし、救いようがない。


モテだろうが、非モテだろうが、誰かを激しく求めない限り、僕らは孤独なんだということだと思う。

2013年6月4日火曜日

お父さんにオススメの子守唄

ウチだけかもしれませんが、かなりの高確率で子どもが寝てくれる子守唄を紹介します。


斉藤和義の『ワッフルワンダフル』

ワッフル ワンダフル
ワッフル ワンダフル
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ファンハウス (2010-10-01)
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原曲よりも、2倍ぐらい遅く、ゆっくりと歌います。

声はしっかり出して、気持ち大きすぎる位の声で歌った方がよいです。



抱っこしながら、子どもの頭を胸につけると、男の人の低音が安心感を与えるみたいです。



ウチは男の子が二人ですが、どちらも新生児の時からこれを使ってます。


よっぽどダメなときはダメですが、2かいくらい歌うと、大概寝ていきます。




子どもの寝かしつけにお困りのお父様は一度試してみてはいかがでしょうか。


効果は保証しません。

2013年6月1日土曜日

EXILEの記号的カッコよさについて

EXILEってかっこいい。

EXILEのかっこよさには、記号的なものがある。




『スプートニクの恋人』という小説の中で、記号と象徴の違いが説明されている。



「天皇は日本国の象徴だ。しかしそれは天皇と日本国とが等価であることを意味するのではない。わかる?」
「わからない」
「いいかい、つまり矢印は一方通行なんだ。天皇は日本国の象徴であるけれど、日本国は天皇の象徴ではない。それはわかるね」
「わかると思う」
「しかし、たとえばこれが、<天皇は日本国の記号である>と書いてあったとすれば、その二つは等価であるということになる。つまり我々が日本国というとき、それはすなわち天皇を意味するし、我々が天皇というとき、それはすなわち日本国を意味するんだ。さらに言えば、両者は交換可能ということになる。a=bであるというのは、b=aであるというのと同じなんだ。簡単にいえば、それが記号の意味だ」
天皇は日本国の象徴だ。しかしそれは天皇と日本国とが等価であることを意味するのではない。わかる?」
「わからない」
「いいかい、つまり矢印は一方通行なんだ。天皇は日本国の象徴であるけれど、日本国は天皇の象徴ではない。それはわかるね」


話を元に戻すと、EXILEのかっこよさは記号的だ。


EXILEはかっこいい。

かっこいいのはEXILEのことだ。

「EXILE」と「かっこいい」は等価で、交換可能だ。



テレビでEXILEが出てくると、僕らはそれをかっこよさの記号として捉える。

僕らは、それを「かっこいいもの」と捉える必要がある。

記号だから。


もし、そこで「EXILE? かっこよくねえよ」なんて考えだしたら、テレビ上での文脈が成立しなくなる。

だから、そこには異論も疑問も認められない。

テレビでEXILEを見たら、それは「かっこいい」のだ。




この記号的にかっこいいEXILEを眺めていると、だんだん不思議な感覚に陥る。


いわゆるゲシュタルト崩壊が起き始める。

脳ミソの中で

EXILE→かっこいい→EXILE→かっこいい・・・

を繰り返していると、ある時点で、


「あれ? ”かっこいい”ってなんだっけ?」



ってなる。




そういう感覚に陥ったとき、その記号的カッコよさがある種のおかしみを帯びてくる。


オースティンパワーズのようなコメディを見ているような感覚に陥る。


かっこいいってなんだろう?





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