2014年6月10日火曜日

【感想文】『女のいない男たち』/とりあえずドライブ・マイ・カー』の感想

読んだ。すべての話について感想を書くのは大変なので、とりあえず『ドライブ・マイ・カー』だけメモ。



ネタバレアリ。

女のいない男たち
女のいない男たち
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村上 春樹
文藝春秋 (2014-04-18)
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『ドライブマイカー』

みさきとは何ものか

主人公家福は、女性には2種類いると考えている。
“いささか乱暴すぎるか、いささか慎重すぎるか、どちらかだ”
しかし、物語の中で出会う“みさき”は、このどちらかにも当てはまらない。
物語での冒頭に出てくる、家福の“女性論”に当てはまらないというこの事実は、とても重要な意味を持つと思う。

単純に異性として意識しない存在と言うだけではないと思う。

彼女は、家福にとって理解を超えた存在であり、人知を超えた存在であるといえる。


家福は処世術として、世の中をかなり偏見に満ちた目で眺めているように見える。

禍福は目の前のものをとりあえず便宜的に「こういうものだ」と仮定する。

もちろん家福自身も、100%その仮定が正しいと思っていないけど、そういう風に仮定して不都合は特にないし、その方が世界がわかりやすくなるからそうしている。


たとえば、“女性には2種類いる”とか、“〇〇村ではみんなポイ捨てをする”とか。


みさきの登場は、そんな家福を揺さぶる。そして物語が動きだす。


物語の中でみさきは、鶴の恩返しの鶴みたいな、人知を超えたものを与えるためにやってきたんだと思う。


盲点について

この物語は“盲点”が一つのテーマだと思う。


家福は、生きやすいように偏見を抱えて生きている。あまりにもそれに慣れすぎて、それが“盲点”となって、彼を苦しめている。

なぜ、彼の奥さんは“大したことのない”高槻と浮気をしなければならなかったのか。

物語の中で、家福は高槻のことをかなりけちょんけちょんに言っている。

家福は高槻のように愚かな振る舞いはしないかもしれない、だけど、家福は高槻のように正直な気のいい振る舞いもできない。

うまく言えないけど、心の奥底家福は高槻のことを羨ましく感じているように見える。


あんなふうに、正直に素直に生きていけたらいいのにと。

だけど、家福の生き方ではそれに気づくことができない。すでに家福は“高槻は愚かだ”という偏見を持っているため、“高槻の生き方が羨ましい”という気持ちは盲点となって見えない。

そういう盲点が、“妻の浮気”という別の形を持って具現化したんじゃないだろうか。

ある意味で、妻の浮気は“高槻のような(素直な)生き方を望んでいる家福自身”を気付かせるためのメタファーなんじゃないだろうか。

そんな気がする。



実在の土地、架空の土地

単行本化にあたって、『ドライブ・マイ・カー』に出てくる北海道の地名が、実在のものから架空のものに変えられた。

まえがきで
“テクニカルな処理によって問題がまずは円満に解決できてよかった”
とある。

テクニカルな処理によって何とかなる程度で使われてたんだと思うのも、なんだかアレだけど、実在の地名が使われた雑誌を読んだ時と、架空の地名になった単行本を読んだ時と、やっぱり少し印象が違ったので、その辺をメモ。



実在の地名の場合、それは揺るぎようもなく「この町だ」というものが存在する。もちろん、「そんな町聞いたことない」って言う場合もあるし、その場合はそれが実在するのか架空のものなのかすら判断できない。だけど、「実在するのに実在するかどうかわからないような町」という微妙な表現が成り立つ。

架空の地名の場合、その地名がいったいどういう町なのか、どれくらいの規模で、どの辺にあるのか、すべて想像の世界になる。もちろん文脈から判断することはできるけど、すべて読者(あるいは作者)の頭の中にだけ存在する町になる。「実在するかどうかもわからないような架空の町」を表現するのって結構難しいと思う。


と、まあ、かなり細かいニュアンスの違いはあると思うけど、「だだっ広いだけのパッとしない町」という意味においては確かに“テクニカルに処理できる程度の問題”だと思う。


と言うような話をしたら、雑誌掲載時に使われた実在する町に住んでいる人たちは怒るかもしれないけど、3分の2が森林と言われる日本において、「パッとしない」ことのない町がいったいどれだけあるだろうか。星の数ほどある「パッとしない町」の中から作者がそこを選んだのには、「みんな知らないけど、僕だけは知っている」という思い入れはやっぱりあるんじゃないだろうか。

そんな気がします。

2014年6月1日日曜日

蜂蜜採り体験に行ってきたでござる

蜂蜜採り体験に行ってきた。

なかなか貴重体験だったので、記憶が新しいうちにメモ。

※以下は、単に僕の記憶をメモしたもので、記憶違いや考え方の相違やら、云々かんぬんで、事実と異なることがあっても僕は一切責任持ちません。あと、蜂に刺されたり、挙句の果てになんたらショックが起こったり、なんやかんやしても自己責任でお願いします。

イベントの趣旨

  • うちの実家の地域をテリトリーにするJA主催のイベント。
  • JAが地元ブランドとして最近売り出した有機農法、無農薬の米のPRとして催された。

米と蜂蜜

  • この米は化学肥料を使わない代わりに、「ヘアリーベッチ」と呼ばれる植物を肥料にしている。
  • ヘアリーベッチは、根っこに「根粒菌」と呼ばれるバクテリアを形成する。
  • 根粒菌は空気中の窒素を肥料に変える。
  • 田植えの前に、ヘアリーベッチごと田んぼを鋤(す)くと化学肥料を使わない土壌の出来上がり。
  • ヘアリーベッチは、マメ科の植物で、紫色の花を咲かせる。"ベッチ"とは、肥料になるマメ科の植物のことで、茎に産毛のような毛が生えているため、このように呼ばれる。花の色と形が"藤"に似ていることから、日本ではクサフジとも呼ばれる。
  • 肥料になる植物には、レンゲソウなどもあるが、ヘアリーベッチは、寒さに強く丈夫なので、最近はヘアリーベッチを利用するところが増えてきた。
  • ヘアリーベッチからはよい蜂蜜を採ることができることから、JAと養蜂家がコラボしている。
  • ヘアリーベッチの蜂蜜は透明度が高い。(透明度の高さと味の関係はよくわからない)

ミツバチ

  • 今回のミツバチは西洋ミツバチ。
  • 蜂は黒いものを攻撃する傾向がある。山に入るときや蜂蜜を採るときなどは黒いものを身に着けない。
  • ミツバチは、針を刺すと死んでしまう(針に返しが付いていて、針が抜けてしまう)。なのでよっぽどなこと(集団として危険であると判断するようなことなど)がない限りは刺さない。
  • ミツバチには偵察隊がいる(ぶんぶん飛び回っているやつ)。こいつを手で振り払ったりすると、集団で襲ってくることもある。目障りでも無視すること。
  • ハチの巣に近づくときは、肌を露出させない。頭から網をかぶる。ただし、軍手はNG。ミツバチは、足が絡まって飛び立てなくなると、最後の手段として針を刺すかもしれない。ゴム手袋のようなツルツルしたものが○。
  • オスは働かない。生殖のためだけに生きる。働かないので、花の季節が終わると巣から追い出され、文字通りのたれ死ぬ。あわれ。
  • 働き蜂の寿命は蜜を集める時期で6週間ぐらい。それ以外だと2~3か月くらい。
  • 働き蜂は一生のうちにスプーン1杯くらいの蜜を集める。
  • 働き蜂は、最初のうちは巣の中で働く。年老いてから外にみつを集めに行く。
  • 働き蜂の活動範囲は2から3キロ。ただし、巣の周辺に花がいっぱいあるなら、そんなに遠くに行かない。
  • 蜂の巣の六角形の部分は、蝋(蜜蝋)でできている。蜜を一旦体内に取り入れ、何らかの化学変化?を経て蝋になる。
  • 蜜蝋は普通に蝋燭として使える。今は石油由来のものが一般的だが、昔はこれを使って蝋燭を作っていた。ヨーロッパの教会では、蜜よりも蝋を取るために蜂を飼っているところもある。
  • 六角形の一つ一つに蜜を入れる。一つの六角形が蜜でいっぱいになると、蝋でふたをする。
  • ミツバチは巣の中が蜜でいっぱいになってしまうと、別の巣を作りに出て言ってしまう。人が適当に蜂蜜を採ってやると、同じ巣箱に蜜をため続けてくれる。
  • 蜜蝋はおいしくない。

蜂蜜の取り方

  • 巣箱ひと箱には約三万匹のミツバチがいる。
  • 巣箱に煙を吹きかけ、蜂を追い払う。蜂にとっては山火事のイメージ。
  • 箱から板状の巣を取り出し、刷毛で残った蜂を追い払う。
  • ふたをされてしまった六角形の部分は、包丁でふたを採る。
  • 遠心分離器みたいな器具にに板をセットし、ぐるぐる回すと、蜜が採れる。
  • 網で蜜蝋の部分を取り除く。

その他

  • この農法で作られた米にスプーン何倍かのこの蜂蜜を入れて炊いた米を頂いた。うまかった。ただ、このうまさが、米そのもののうまさなのか、蜂蜜によるものなのか、青空の下で食べたせいなのか、炊き立てだからか、味音痴の僕にはわかりません。

感想

  • 蜂蜜採りなんて、なかなかできない体験をさせてもらって、楽しい一日でした。
  • 少子高齢化やらTPPやら、大変な情勢の中、あの手この手で頑張っている農家の方や、JAの方に頭が下がります。
  • 頑張ってほしいし、そういう人たちが生み出すものを手にしていきたいと思いました。
※なかなか暑い一日でした。描き切れていないところもあるかもしれないけど、とりあえず今日はこの辺で終わりにする。




ミツバチ 巣箱
巣箱 これくらいの大きさ
ミツバチ 煙
ポット状のものから煙が出る。煙でミツバチを追い出す

ミツバチ 巣箱の中
巣箱の中


ミツバチ 女王蜂
女王蜂には印が付けられている。



巣のフタ部分を取り除く
巣のフタ部分を取り除く


蜂蜜用遠心分離器
遠心分離器でぐるぐる



ハチミツをこす
ハチミツをこす

採れたハチミツ
採れた蜂蜜


ヘアリーベッチ
ヘアリーベッチ



ヘアリーベッチの根っこ
ヘアリーベッチの根っこ。瘤状の根粒菌をうまく撮影できず。