江戸の同心、井筒平四郎を主人公にしたシリーズ。『ぼんくら』『日暮し』に続く第三弾。
宮部みゆきはやっぱり面白い。
僕はあんまりサスペンスとか、ミステリーが好きなほうではないけど、宮部みゆきは好きだ。
宮部みゆきの小説は、一応サスペンス的な物語なんだけど、なんというか、トリックとか、種明かしとかそういうところに重心を置いてないのがいい。
なんというか、あくまでも事件は氷山の一角で、その下に潜んでいる社会問題とか人間関係とか、人間の心理だとか、そういうものをしっかり描いているような気がする。
僕の中で本当に面白い小説(映画も可)の定義は次のようなものだ。
”本当に面白い小説(映画)は、オチがわかっていても面白い”
宮部みゆきのサスペンスは、人間を描くための方便みたいなものだから、たとえ犯人がわかっていても、読んで面白い。
むしろ、変なハラハラドキドキ感がない分、二回目の方が描かれている人間についてじっくり考えながら読めるかもしれない。
で、今回読んだ『おまえさん』について。
この物語では、人物の二面性(あるいは多面性)と言うものが、重要なテーマであると思う。
最初、とてもいいやつだと思っていた人が、あるときとても嫌なやつに見えたりする。
逆に、嫌なやつだと思っていた人が、あるタイミングではとてもかっこよかったりする。
とくに、人物が「変貌」するわけでもないのに、ちょっとした見方の違いで、がらりとその人物の印象が変わってしまう。
そういう描写がとても面白い。
考えさせられる。
強さと弱さ、優しさと卑劣さ、正義と悪、そういったものがちょっとした拍子にがらりと入れ替わってしまう。
いや、おなじ現象を別の角度から見ると、まったく逆に見えてしまう。
だから、僕らはモノを見るときにはとても注意しないといけない。
また、ちょっとした拍子に自分でも気づかないうちにまったく正反対の方向へ転げ落ちてしまうかもしれない。
そうならないように、気を付けないといけない。
そういうことだと思います。たぶん。
『ぼんくら』シリーズはキャラクターがとてもいい。どのキャラクターもイキイキ描かれていて、とても楽しい。
まだ、続編出るかな?
宮部 みゆき
講談社 (2011-09-15)
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