ある夜、僕は交差点に立っていた。
交差点には悪魔がいた。
悪魔は言った。
「君の魂をくれないか。そうすれば世界一のギターテクニックを教えてあげるよ」
僕は迷った。
僕はただのサラリーマンだ。
妻も子供もいる。
守るべき家庭がある。
僕にはかつて夢があった。
子供の頃からミュージシャンになりたかった。
学生の頃はバンドも組んだ。
プロを目指せると思った。
でも、結局あきらめた。
そして家族を手に入れた。
だけど、時々考える。
本当は夢をあきらめるべきではなかったんじゃないだろうか。
あのまま夢を追いかけていれば、今頃はもっと充実した人生を送っていたんじゃないだろうか。
僕はしばらく考えた。
考えている間、悪魔はじっと答えを待っていた。
ようやく僕は答えた。
「僕は、魂を悪魔に売り渡すわけにはいかない。僕には守るべき家族がいるんだ」
すると、悪魔は答えた。
「もういないよ」
僕は僕の手を見た。しわしわになっていいた。
髪の毛は抜け落ち、半分以上の歯もなかった。
僕は年を取っていた。
そしてすべてを失っていることを思い出した。
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